始まりの旋律

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「何もしないで普通に来ていいわよ。私、放課後は大体いるから。ただ、あまり遅い時間だといないからね」 と先生は言った。 「はい、わかりました」 と鈴音は元気よく返事をした。 鈴音の楽器も無事に決まったので 「そろそろ帰る?」 と鈴音に聞く。 「そうだね。私がやる楽器も決めたし、帰ろうか」 と鈴音は答えた。 「先生、今日はありがとうございました」 と僕達は先生にお礼を言った。 「いいえ。また練習しにおいでね」 と先生は笑顔で言って見送ってくれた。 僕と鈴音は音楽室を出て、家に帰るために昇降口へ向かう。 音楽室を後にした僕の鞄には、先程の木で出来たフルートが、ケースに仕舞った状態で入っている。 あまり重いものではないので、入っていることを忘れてしまいそうだ。 自分の物ではないので、よく注意しないと。 音楽室のある別の校舎の階段を下りていると、急に鈴音が 「あっ」 と言った。 僕が 「どうした?」 と尋ねると 「ごめん、教室に忘れものした」 と鈴音は申し訳なさげにそう言った。
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