始まりの旋律

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「いいよ。一回教室に戻ろう」 と僕は言った。 この別校舎の階段を下り、渡り廊下を歩き終えれば、昇降口はすぐ近くにある。 一回教室に戻るには、また階段を上って行くことになるため、少し面倒ではある。 「ホントにごめんね」 と鈴音は階段を下りながら言う。 「いや、別にいいって。それより何を忘れたの?」 教室に戻るのは大したことではないが、あまりにどうでもいいものならやはりそのまま帰りたい。 「筆箱忘れたの」 と鈴音は言った。 「じゃあ、取りにいかなくちゃだな」 さすがに筆箱がないのは色々ときついだろう。宿題すらできない状態になってしまう。 「ありがと、奏ちゃん」 「別にいきなりいいって」 と言いながら僕は階段を下り終える。 そして渡り廊下を歩く。 「でもなんで筆箱なんて忘れたんだ?」 「授業終わったときに、一回机に仕舞っちゃったんだよね。荷物まとめるときに邪魔だったからさ」 と苦笑いしながら鈴音は言う。 「そっか。まぁ、気づいてよかったな。」 別に大した理由ではなかった。 そして、僕達は渡り廊下を歩き終え、教室のある校舎の階段を上り始める。
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