始まりの旋律

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「なぁ鈴音、今日この階段を何回も上り下りしてる気がするよ」 と鈴音に言った。 「ごめんね。ちょっと待ってて、すぐに取ってくるから」 と言って、鈴音は駆け足で階段を上っていってしまった。多分、申し訳なく思ってそうしたのだろう。 どうしたものかと考えたが、このまま階段の途中にいるのも変なので、僕は階段を上ったところで待つことにした。 僕が階段を上り終え、自分の教室のある階へ来ると、一人の女生徒がいた。 もちろん、鈴音ではない。 綺麗な顔立ちをした髪の長い女生徒。 こんな時間まで教室にいたのだろうか? その女生徒は階段へ向かって歩いていた。 そして僕の近くまで来て、すれ違うときに 「そのフルート気をつけてね」 と近くにいる僕にやっと聞こえるくらいの声で言った。 僕は驚き振り返った。 女生徒はもう階段の踊り場まで下りていて、こちらを向きニコッと、微笑んでそのまま階段を下りていってしまった。
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