悲しきメロディー

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他に仕舞える場所は と考えながら僕が見たのは、教室の一番後ろにあるロッカー。 一人に一つずつ割り当てられているそのロッカーは、上と下に別れているものだ。 あそこが一番安全だな。 そう思い、僕はフルートを入れたままの鞄をロッカーに仕舞おうとしたが、少し考える。 まだ朝の早い時間ではあるが、ここは学校の三階。もしフルートを吹いても、ここから学校の外まで音が響くことはないだろう。この教室にも生徒はまだ誰もいないし、今ならこのフルートを吹いても迷惑にはならないだろう。 僕はフルートのケースを取り出し、開けて、組み立てる。 三つが一つになったフルートを、構え、そして吹く。 教室には、木製フルートの優しい音色が響き渡る。 その旋律は、僕のお気に入りの優しいメロディー。 誰もいない教室で、ただ一人で吹くのは、意外にも心地好かった。 やがてそのメロディーを吹き終わり、僕はフルートを仕舞おうとする。 が、そこで、ある音が頭を過ぎった。
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