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『葵、人がせっかく…』
正に今、雅はちっぽけな自分と写真の中の巨大で美しい月との違いを、視覚を通して全身で感じていたのに。
隣に座った人間は似ているなどといったのだ。どっぷりと浸っていた感動が半減してしまい、雅は言葉の途中でため息をついた。
『そんなことより、買ってきましたよ。これ飲みたかったんでしょう?お姫様。』
葵は当たり前のようにストローを差し込み雅の前に差し出した。
『5分も待った。』
『それはすみませんでした。』
一応葵は全速力で廊かを走ったし、一番乗りで売店にも着いたし、今いる図書室までまたもや全速力で走ってきた。
これ以上速くはきびしいですよ…
口にしたところで何も変わらないだろうし、葵はその言葉をそっと飲み込んだ。
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