お姫様と月

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葵は写真を見ながら、月に雅を重ねていた。月はその地にいる人に、同じ面しか見せない。雅もまた違う面をみせてくれようとはせず、何処か距離を置かれているような気がしてならない。 もし俺が少しでも移動すれば―― 今と違う雅さんをみれるのだろうか。 一番近くで 誰よりも沢山 貴女を見ていたい――― 周りの人間からみても、葵は雅に思いを寄せていたし、誰よりも雅に近い存在である。それでも、思いを伝えるということができないのは、やはり雅が常に距離を保とうとしているからだった。 横で写真を見つめながら、自分が買ってきたジュースを飲む雅に葵はもどかしさを感じた。 どうすれば、この近くで遠い一歩を移動することができるだろうか…
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