夢のかけら

2/10
前へ
/24ページ
次へ
夢を見た。 血が凍る程恐ろしく、身が引き裂かれそうな程切なく、それでいて、息を呑む程美しい夢。 職場は大手ショッピングモールの一角。 土日祝祭日ともいえばそこら中に家族連れの姿を見る。 だからぐずる子供をあやす光景なんてさ程珍しいものではないはずだった。 なのに、どうしてだろう。 その親子から目が離せなくなってしまったのは。 生後1年に満たない赤子がベビーカーにのっていた。 母親が母親だけが持てる笑みで子供を見つめている。 辺りに幸せが満ち満ちている。 ほほえましい光景。 なのに、見ていると喉が苦しい。息がつまる。 この感情は何だろう。 あまりにも強い憧憬。羨望。そして、嫉妬。 胸にこみ上げてくる感情が、親子から目を逸らせない。 どくどくと鼓動が脈を打っている。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加