夢のかけら

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突然、子供が火の付いたように泣き声をあげた。その瞬間だった。 頭の中で、何かが弾け飛んだ。 子供の泣き声が頭の中で反響し続ける。 心を掻き立てる。 かき乱す。 狂おしい程切ない。 こんな激しい感情は、知らない。 刹那、胸に鈍い痛みを感じた。 心臓、ではない。乳房だ。 手を当てると、やけに張っている気がした。 張り?女でもないのに? 彼女が、生理前は胸が張るといっていた。 ふいに、そんなことを思い出した。 母親は子供を抱き上げて宥めすかしているが、それでも子供は泣き止まない。 なおも泣き続ける。 それを見て、違う。そうじゃない。と心が叫んだ。 腹をすかせているのだ。 乳をやらねば。 乳をやらねば。
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