……エース！！～sub ace～

あの日あの時あの瞬間

来栖高校野球部

　春夏含めて甲子園十回出場。西東京の名門。
　野球部は全寮制で盛ん。毎年注目されているが、すでに八年間甲子園から遠ざかっている。
　しかし、今大会はジンクスとされていた準決勝に勝利。
　その勢いでエースの四谷を中心に、“古豪”という周りの声を跳ね返せるか、期待である。

　今日の朝刊の記事だ。

　気に入らない。実に気に入らない。なんだ“古豪”って。八年間で準決勝五回出場だぞ。なめんな。ん？ 全部負けてるけど何か？

　さらに言わせてもらうと、こんな記事に便乗して今のこの学校について説明しようとする作者の横着精神が気に入らない。

　ま、そんなことはどうでもいい。だが、確実にこのチームは古豪などではない。れっきとした優勝候補だ。
　勢いではない。実力で勝ち抜いてきた。

　今年の来栖高校は打線もハイレベルだが、なんと言ってもエースの四谷先輩だ。
　先輩はプロも注目しているこの大会屈指の好投手。ＭＡＸ１４６ｋｍのストレートとキレのあるフォークを中心に相手を三振に取って見せる様は圧巻だ。しかも、今大会は準決勝の１点しか失点していない。

　……さらにはアイツもベンチ入りしてるからな。今日の応援にも熱が入る。

「……っし、さてと。着替えるか」

　俺はユニホームに着替えるために、新聞をたたんで部屋に戻った。