あの日あの時あの瞬間

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  「ストライク! バッターアウトッ!!!」  おぉー、という声が聞こえる。これで三振6つ目。晋の調子がすこぶる良い。最後の外角のスライダーなんて手を出させなかったからな。相当キレていたのだろう。調子が良すぎて、逆に怖いくらいだ。  現在八回表を終わって、2ー0。来栖高校がまだ勝っている。そう、三回から晋はまだ失点していない。ストレートは最高球速を抜きまくり、決め球のスライダーはキレまくっている。  来栖ナインはベンチへ戻り、攻撃への準備を始める。 「晋、ナイスピッチ!」  ショートを守っている二年の笠蕗先輩が晋に話しかけているのが聞こえる。他の人もしきりに晋を褒め称える。  あと九回表を守りきれば、悲願の優勝だ。でも、強力打線相手に2点ではまだ心許ない。この回でダメ押し点を入れたい所だ。  自然とチームとしての攻撃への士気の高ぶりを感じる。  一方で大興学院のベンチ。皆が唖然とした表情だ。まさか一年生投手にここまで押さえられるなんて、予想だにしなかったのだろう。  だが、試合を諦めた顔は無論していない。最後の攻撃へ向けてしっかり守ろう、という意識が見られる。  ベンチの奥を覗き込むと、相手の監督はバッテリーを呼び寄せてアドバイスをしている。あんな光景はこの試合で初めてだ。――やはり切羽詰まっているのだろうか。  そして、アドバイスを聞いたバッテリーはグラウンドへ向かう。  ――表情は決して柔らかくはない。
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