あの日あの時あの瞬間

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  「かわいそう……」やら「またかよ……」やら「わざとじゃねぇのか?」とかいう声が周りから聞こえ、その後すぐ「おおっ!」という声が耳に入ってくる。  選手が皆晋の周りに寄るなか、谷先輩は相手の投手の所へ。そして、ウチの齋藤監督はというと相手の監督の方へつかつかと向かっていく。  ついに、齋藤監督の堪忍袋の尾が切れたようだ。あの人は気は短いけど、情に厚い人で、正義感も強い。  自分の可愛い選手を三人もやられては黙っていられるわけもない。審判に止められながらも、それを振り切ってずかずか相手ベンチへ向かう。 「おいおいおい。これマズイ雰囲気じゃねぇの!?」  芳川が慌てて俺の肩を揺する。 「あ、ああ……」  俺も冷静に語りを入れているようで、混乱してしまっているみたいだ。適当な返事が脳内検索出来ない。一哉だってソワソワして落ち着きがないし。 「「「これは…ヤバいな……!」」」  その後やっと俺達三人がまともな言葉を紡ぎだしたのは、全選手がマウンドに集まり、齋藤監督が相手の監督の胸ぐらを掴んでからだった。  その言葉は、細く、弱いものであったが、あまりに現実味を帯びた、重い一言だった。
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