投手が立ち上がり乱れるのは仕方ないですよね

2/8
前へ
/22ページ
次へ
 雲のない透き通った空。昇り始めた太陽が地面を照らし、影を作り出している。  空を仰ぐ。ここから朝日を眺めるのは本当に久し振りだ。眩しすぎて目が痛くなる。眠気が覚めるようだ。  そしてこの膝に伝わる土の感触。触らなくてもわかる。ああ、ここが俺達の居場所なのだ、と。  ――さらに刺激的でたまらないのが、この足に伝わる感触。この地面に触れていると、足が痺れるような刺激的かつ持続的な感触。  ――本当に久し振りだ。 「おい、七海。キョロキョロしてどうした。このグラウンドの状態になんか違和感でもあったのか?」  ふいに監督がニッコリ笑って話し掛けてくる。  この人のこんな表情は初めて見る。今日はやけにフレンドリーだ。さっきも他の奴に話し掛けていた。  ……今なら、話しても大丈夫だろうか。 「ええと、ですね。何故俺達3人が外野で正座をさせられていて、芳川がひょうひょうと内野でノック受けてるんスかね?」  ――ここにいる俺とその他2名は只今懲罰を受けている真っ最中だ。 「ばかもん!! まだ反省してないのか! 貴様らが朝練に遅刻したからだろうが!」 「だからって、外野に座らせることないだろ!!芳川がヘタクソだからポロポロ後ろにそらしやがって、俺達に当たりそうで危ねぇんだよ!! 足痺れて動けないし!」  ほら、また俺の前を硬球が通過する。そのあとゆっくりボールを拾いに来る芳川のにやけ顔が憎たらしい。 「なんだ! 逆ギレか!? 反抗期なのか!?」 「違うわ!!! アンタ俺の何なんだよ!?」  ……実に納得いかない。  朝の出来事を説明すると――
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加