投手が立ち上がり乱れるのは仕方ないですよね

6/8

17人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
 朝練を終えた俺達は、朝食を食べに行くために食堂へ向かう。  ……さほど腹は減っていないのは気にしない傾向で。正直足がとてつもなく痺れているので、歩きたくもないのは気にしない方向で。  食堂に入ると、いい匂いが漂ってくる。運動もしていないのに、急に腹が減ってきた。今日朝練をした奴らはもう朝食を貪っている。  すると聞き慣れた女の人の声が。 「高校野球児に必要なのは体力、技術力、朝き・ち・ん・と・起きる精神力。要するに、心・技・体。では……それを心得た奴は食べてもよろしい」  終始遅刻組の3人を見てそう言った女性はさっき俺達に鉄槌を下した人、笹川 穂(ササガワ スイ)。この学校の野球部の監督をしている。  一年前のあの事件の後にすぐ就任した監督で、ずっとチームの改善に勤しんできた人だ。部内での信頼も厚い。  ちなみに言うと、かなり美人。早朝の怒声からは予想出来ないかもしれないが、美人だ。普段は言葉使いも普通で、女性らしく、魅力的なのだが、野球が絡むと男勝りになって、あんな口調になるわけだ。しかもかなり厳しいし―― 「めんどくさい性格してるよな、まったく……」  語りが、つい口に出てしまった。いや、でも普通の時の性格はそこまで悪くはな―― 「ん? 私の性格がどうかしたのかナ? 飛沫クン? もしなんだったら今日君にはずっと内野に正座してもらってもいいんだヨ?」 「何でもありませんッ!」  ――性悪女と思われる。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加