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一般的。平凡。普通。無味乾燥。そんな言葉がぴったり当てはまる毎日だった。……この日までは。 梅雨時特有の、じめじめした空気が、体育館を満たしている。 四時間目の、体育の授業。 苦手なバスケ。 ……眠い。だるい。 前日、読み出した本に夢中になってしまい、つい徹夜してしまった。 でも、そんなに珍しいことではない。 ……授業が終わったら、図書室で続きを借りて帰ろう。 ふとそんなことを考えて、集中力が途切れた、ちょうどその時。 「舞!!」 「え」 はっと気がついた時には、目の前にボール。 派手に顔面で受け止めて、さらに床で思い切り後頭部を打ちつけた。 目が回って、意識は闇の中に吸い込まれてしまった。 額に、冷たい感触をおぼえた。 それと同時に、後頭部の鈍痛も。 「いった……」 「よかった、舞。気がついたんだね」 「東雲さん、大丈夫?」 顔をしかめながら目を開けると、額に濡れタオルが置かれている。 保健室のベッドの上だった。 そばに、同じクラスの杏子と、養護教諭が立っていて、不安そうに私の顔を覗き込んでいる。 「倒れた拍子に脳震盪を起こしたみたいね。気分はどう?」 「あ…はい…大丈夫…」
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