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「そう」
外はちょっとだけじめっとして、暑い。
春風が甘い紅茶の匂いを運ぶ。
「亜希さんは?」
「私?」
亜希は口の端を歪めて、笑顔を作るが、それは全く笑っていない。
「私は、好き、という感情じゃないから」
リツカも私も、閉口してしまう。
彼女の考えていることが、なにひとつわからない。
亜希が歩き出し、私たちもついていく。
遠くに見える川面が、反射して眩しい。
空には、雲ひとつない青空が、夕闇の色にのまれつつあった。
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