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校門を出ても、私たちは一言も会話をしなかった。
酸素はそこかしこにあるはずなのに、息が上手く吸えない。
自分の身体全部が心臓になったみたいに鼓動が響く。
沈黙は嫌だ。
目眩がするほど静かな二人に、町の喧騒が聞こえはじめる。
駅の方から歩いてくる学生たちが、私たちを見てこそこそと話す。
感じが悪い。
「…あ、ここか」
「え?」
リツカが立ち止まったのは花見屋という喫茶店の入口だった。
「ここですか?」
「うん。花見屋って言ってたから、ここだと思う」
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