793人が本棚に入れています
本棚に追加
/261ページ
「記憶喪失っていうハンデがあったし、記憶が戻ったなら喪失期間はリセットじゃない?」
釣り上がった眉に恐怖さえ覚える。
「それとも」
逃げられないと、そう確信する。
「何年も通じてなくて、記憶すら無くて、そうしたら切れてる?」
ふと手に温かいものが触れる。
それがリツカの手だとわかるのに時間がかかった。
いつもより湿っぽい。
「…後者だと思います」
「ふぅん…、後者…」
亜希の表情がぱっといつもの笑顔に変わった。
さっきまでの黒い笑いは跡形もなく消失して、優しい笑顔だけが張り付いている。
「どうして?」
「それは…。一度ちゃんと別れたはずですし…」
それも、亜希からのはず。
最初のコメントを投稿しよう!