第十五章

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「記憶喪失っていうハンデがあったし、記憶が戻ったなら喪失期間はリセットじゃない?」 釣り上がった眉に恐怖さえ覚える。 「それとも」 逃げられないと、そう確信する。 「何年も通じてなくて、記憶すら無くて、そうしたら切れてる?」 ふと手に温かいものが触れる。 それがリツカの手だとわかるのに時間がかかった。 いつもより湿っぽい。 「…後者だと思います」 「ふぅん…、後者…」 亜希の表情がぱっといつもの笑顔に変わった。 さっきまでの黒い笑いは跡形もなく消失して、優しい笑顔だけが張り付いている。 「どうして?」 「それは…。一度ちゃんと別れたはずですし…」 それも、亜希からのはず。
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