第十五章

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「…だからなんなんだ。そんなの、どうでもいいこと」 亜希はカップを掲げた。 カップにあったコーヒーを机にぶちまける。 「覆水盆に返らず?」 店員が駆け寄って、机を拭きはじめる。 私には、彼女がなにを考えているのかわからない。 「だったらいいわ。私は手に入らないものは嫌いなの、いらない。でも」 亜希は一瞬、黒い笑顔を浮かべる。 私に握手を求めるみたいに手を差し出した。 「手に入れようとして、最後まで手に入らないのはもっと嫌い」 矛盾してるでしょ、と言って笑う。 私の顔は凍ったまま。 リツカの掌だけが温かい。
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