二次元より

2/2
前へ
/2ページ
次へ
規則正しい電子音。時折何かの装置が空気を吐き出す音がする。少し前から研究員達は昼休みの為、この部屋には私しか居なかった。 『次元を行き来する者』それが私を表す一つの名前である。普段はNo.106811とかアレなんていう当たり障りのない呼び名で呼ばれている。前者は名というよりも所謂シリアルナンバーであるし、後者に至っては固有名詞ですらない。所詮私という存在はその程度なのだ。 今私の意識は現実にあるとは言えない。無数に広がる0と1の世界に私は居た。流れ続ける情報、それは例えばニュースであったり娯楽・創作物Et cetera、時には陳腐なポルノであったりする。その中から必要なモノだけを選び取り、三次元の世界へと引きずり出して来るのが私の役目であり、私に与えられた能力なのだ。 時代は二次元にあった。政治経済は無論、日常生活にも二次元であるネットワークは必須であった。20世紀中頃から21世紀にかけて世界を脅かした核による戦争なんてものは時代遅れであった。無くなったという訳ではないが、少なくともそれが主流になることは全盛期のようにはならなかった。 だから私のような二次元と三次元を行き来するような異質な存在が重要視されるのだ。国際的な戦略、それは勿論軍事的な意味も含んでいる訳であるが、それらを遂行する上で前世紀以上に重要になった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加