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第-09話 刻まれた歪み
例えばのはなし。
可能性全ての存在証明は反転して不可能性全ての存在証明と成りうるということは猿でも分かる。
したがって何もかもが存在する可能性を捨て去ることは不可能だし、そのような不可能性を証明することもまた、不可能だ。
不可能であるという可能性が存在する以上、そんなもの最初から可能であり、そして不可能でしか無いのだけなのだけれど。
けど、例えばそれがもし既に終わったことだとしたら?
そこには可能性やら不可能性やらなんて、そんな曖昧な概念は存在せず、推測論ではなく結果論としての存在証明が成立する。
していたのかもしれない。してなかったのかもしれない。
ただ一つ確かなのは、そこには確実にただひとつ、何かしらの概念が確立している。或いはしていたということ。
例えそれが夢みたいで、幻想でしかなくったって。
それでも
確かに僕はそこにいて、そしてそこにいた。
ハズだった。
どこでも無い場所で、ふと少女はちっぽけな箱を見つけた。その中身が何なのかは、誰も知らなかったし、誰も分からなかった。
その箱は堅く閉ざされていたから。開ける手立てはかつてはあったが今ではもう失われていた。人々はその箱を壊すことを望んだ。
だがある日、一人の少女がその箱の封を破った。
壊すのでは無く、開いたのだ。
中から出てきたのは、哀れな男の夢だった。
少女は夢に問うた。あなたはどこにいるのかと。
少女は言った。私はここにいるよ、と。
その時、僕はどこにいたのだろうか。
夢を開いた少女は、その答えを僕に求めた。
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