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「ありがとうございます看護師さん。それに皆さまも」
無理矢理に作った笑顔で彼女は嬉しさを表していました。そして早速、鞄から真っ白な花瓶を取り出し、包んである新聞をはずし始めました。
「よかったですね、奥さん」
蓮本さんはそう言いました。すると彼女は作業しながら、口を開きました。
「私たち結婚してません」
静かな、一定のリズムの声。蓮本さんは、悪いことを訊いた。と悪いことを言ったかの様に詫びると、静かにベッドに横になりました。
静かな病室で私はベッドメイキング、彼女は花を飾っていました。
花瓶に水を入れ、菊の花を刺していました。
「すいませんでした。今日は本当にありがとうございました」
飾り終えた彼女は深々と頭を下げると、鞄を持ち部屋を後にしたのでした。
私はこの不思議な女性を部屋から見えなくなるのを見届けると、部屋を出てナースステーションへと戻ったのでした。
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