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「何も言ってなかったよ。黙々とひとりで花を取り替えて、出ていったよ」
少し恐縮しながら蓮本さんは話しました。
「そうですか。わかりました。ありがとうございます」
私は苛立っていました。何故あの人は誰もいないベッドに花を飾るのでしょうか?確かに最期に最愛の人がいた場所です。しかし、供える場所が違うと思います。今日は葬式であったはず。身体は火葬され、お墓に入れられたはずです。だったらお墓に飾るのが普通ではないでしょうか?
考えれば考えるほど理解不能な彼女の行動に腹が立ちました。
私はどうしたらいいのか全く分からず、先輩の皐月(さつき)さんに相談することにしました。
「そう、そんなことがあったの。確かに菊の花はよくないわね。それに他の患者がそのベッドに入ることになれば困ったことになるわ。取りあえず明日また来たのなら話をしてみたらどう?きっとこれは彼女の心の傷故の行動だと思うの。来なかったら来なかったで問題ないし……」
「そうですね。明日来られたらなんでこんなことをするのか尋ねてみます。皐月先輩。アドバイスありがとうございました」
皐月先輩に話したことにより、少し私の肩の荷がおりたのでした。
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