プロローグ

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    月が出ていた。 空いっぱいに広がった濃紺のカーテンをそこだけ丸く切り取ったように、ぼんやりと浮かんでいる。 星は見えない。 この世界の空はあまりにも汚れすぎていて、小さな星々の光など、地上に届くより前にかき消えてしまうのだから。 人々は本物の星を忘れた。 地上を追われた人々は地下に逃げ込み、そこで見つけた宝石や鉱石の輝きを星になぞらえた。 石に力を込めて使うは星の魔法。 星の魔法は希望も絶望も与える。 これは、そんな星の魔法を使う一人の少年のお話――  
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