憂鬱のアマゾナイト

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  「よし、できたっ……!」 喜色に顔を染める少年。 手元には、小さな赤い宝石。 一見丸く見えるそれには丁寧なオーバルブリリアンカットが施されており、ランプの光を受けてそれぞれの面がきらきらと輝いている。 昼も夜もない地下の街の、家もまばらな僻地に彼はその住まいを構えていた。 今、町の殆どは地下にある。 洞窟などに手を加えた街。 穴を掘り進め、整備した街。 大抵の街はそのどちらかだ。 そしてこの町は前者。 目も眩むような底の見えない闇に、少しずつ手を入れて作り上げられた洞窟の街だった。 そのままでは不安定極まりない足場は、高い柵の付いた橋をかけることで解決された。 橋はいくつも交差し、無数に枝分かれしている。 人々が地下に逃げ込む羽目になった原因は、戦争にあった。 地上は度重なる戦争に疲弊し、もはや戦場としての意味しか成さなくなってしまったのだ。 そして、彼の住むこの街には、学生が多く住んでいる。 それというのも、星の魔法を研究する学士を育成するための学校を中心とした、学生の街だからだ。  
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