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こんこん、と玄関のドアを誰かが叩いた。
「あ、はーいっ!」
足元に散らばったレポートやら書きつけの紙に足を滑らせそうになりながら、彼は来客を出迎えた。
光の乏しい地下空間では、ランプの光の届かない物陰がどうしても出てくる。
しかし、勝手知ったる我が家。
目を瞑っても歩けるほどに馴染んだ空間の中、迷いなく玄関まで到着することは容易い。
「やあ、こんにちはリティ君。実験は捗ってるかい?」
「ユベール君……いきなり、どうして」
銀糸のような長髪を一つにまとめており、中性的で神経質そうな顔立ち。
ユベールと呼ばれた青年は、意図の読めない笑みを浮かべながら少年を見下ろしている。
学校でも優等生、主席候補の秀才だ。
その一方、リティはどうしようもないほどの落ちこぼれだった。
技術が無いのではない。
魔法の発想がとにかく地味なのだ。
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