憂鬱のアマゾナイト

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  ユベールはついに堪え切れなくなったというようにくつくつと笑うと、そのまま笑い混じりの声で答える。 「今言ったじゃないか。実験が捗ってるかどうか様子を見に来たんだよ」 「え、え……でも、どうして僕の所になんか」 ユベールとリティは特別親しいわけではない。 同じクラスではあるものの、成績優秀、眉目秀麗、完全無欠の人気者であるユベールと、目立たない魔法ばかり作り続けているリティには、接点らしい接点はなかった。 寧ろ、自分が一方的に知っているだけで向こうはこっちのことなど気にとめたことすらないのではないか、と思うほどに。 「その様子じゃまだ見てないみたいだね」 呆れたように呟くと、踵を返してしまった。 リティに目をくれず、後ろ向きのまま彼は言い残す。 「卒業研究発表の順、もう掲示されてるよ。俺の次が君なのさ」 「うえぇっ!? ちょ、まっ……」 がごん! 去っていくユベールを追いかけようとして、自らのマントに足を引っ掛けて盛大に転んだ。 強かに頭を打ち付けた彼が目を覚ましたのは、それから四半刻ほど後のことだったという。   
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