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――あ、目が合った。
きょとんと大きく開かれた瞳は茶色の多い日本人には珍しい黒色。
真っ黒だけど、とても澄んでいて綺麗だ。
その綺麗な瞳に魅了された僕には、その黒の中に自分が飲み込まれたかのように映って見える。
「ん、どうした?」
あまりに顔をじろじろと見られてるのに気が障ったのか、その人は僕に尋ねてきた。
「え、えぇと……」
「お前もこの赤髪が気になるんだろう?」
僕が返答に戸惑っていると、その人はさも分かっているかのように問いかけてくる。
確かにその人の長くて綺麗な赤髪は多くの人の視線を集めると思う。
僕も最初に目がついた。
――だけど。
「いや、とても綺麗で澄んだ瞳だなぁ、て」
少し恥ずかしかったけど、そこはちゃんと訂正しておいた。
だって僕はその人の瞳に見惚れていたんだから。
「おまえ……っ」
その人は何かを呟くと、日時計の指針塔からこちらへ歩み寄ってきた。
「え、あれ、ちょっと」
なんとその人は、まるで重力なんて存在しないかのように、指針塔の側面を垂直に歩いている。
もちろん重力の存在は否定できる訳がなく、長い赤髪は下へと垂れており、その人の顔を覆っていて見ることができない。
すごく……恐いです。
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