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「ふぅ……これでやっと半分か」
自転車に乗った、どこかしらの会社の上下赤の制服と帽子を被った青年が何やら呟いている。
自転車は普通のではなく、赤く後部に大きな物入れが付いた自転車である。
彼は今、各家にある郵便受けに鞄の中に入っている手紙を入れている。
その姿を見る限り、どうやら郵便局の配達人のようだ。
「あ~だるい。自転車で一件一件配達とかだるい」
ぶつぶつ独り言を喋りながら次々と手紙を入れていく。
「しかし毎度ながらこの赤い制服着とると、なんか早くなれる気もするな。通常の3倍的な」
余程余裕があるのだろう。
さっきからぼ~っと独り言を喋っているが手紙を入れる作業だけはしっかりこなしている。
「あっ、赤星さんだー」
「おぉ小僧。赤星さんと呼ぶのは止めろと何度言わせるか」
赤星さんと自転車に乗る成年を呼んだのは、下校中の小学生だった。
「だって前に3倍の人って自分で言ってたじゃん」
「いや……でも赤星は酷いって。
確かに赤いよ。
でも俺……一般人ですから。
とりあえず仕事中だから話すのはまた今度な」
小学生にそう言うと赤星さんは颯爽と自転車で駆け出した。
そのまま後ろを向いて小学生に手を振っている時だった。
「赤星さん前!」
「え?」
さっきの小学生が突然赤星さんに向かい叫んだ。
赤星さんが前を向くとそこには……電柱があった。
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