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その人は可笑しそうに「みんなそう呼んでるよ。本人は相当嫌な顔するけどね」と言った。
どうやら彼は、先輩と知り合いらしい。
(先輩…王子ってあだ名で呼ばれてるんだ)
「あー、それよりさ、君。志野から何も聞いてない?」
「…え」
「君は、ここ(3年教室棟)には来ない方がいい。志野にそう言われなかった?」
「な…」
何それ…。何でそうなるんだよ?
モデル辞めたからって…俺に飽きたからって
顔も見たくないって事?
そういえば、モデルを辞めてからは、先輩と校内ですれ違う事すら無かった。
「…お、俺は…」
避けられてた、のか…。
「…俺…先輩に嫌われて…」
ショックで全身の血が下がって行く感覚がするのがわかった。
そんなに…そこまで嫌がられていたなんて…
「ん?…君、もしかして、あいつから何一つ聞いてないの?」
「…?何も…モデルはもういいって、それだけ言われて」
俺の言葉を聞くなり、先輩の友人だというその人は「何やってんだ、あの、うっかりボケ王子は…」と、呆れた声を出した。
そして、落ち込む俺の頭をぽんと軽く叩く。
「そんな悲壮な顔しなさんなよ。あいつは君を凄く気に入ってるんだよ」
「……」
「…気に入り過ぎてバカになってるみたいだけど」
その人が最後にボソリと溢した独り言は小さくて、俺には聞き取る事が出来なかった。
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