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  放課後の僕のお気に入りの部室は、いつもよりがらんとして寂しい気がする。 「はぁ…」 本日、何度目かの溜め息が溢れる。 僕は絵を描く気にもなれず、部室の自分の机に懐いていた。 (顔が見たい…) 「染谷と会いたいなぁ…」 どちらかといえば、僕は面倒くさい事が嫌いだ。 だから、今回も流してしまえば良かったのだ。 しかし。 『僕は、君のヌードを描くくらいなら、君の言う男のヌードを描く方が100倍楽しいと思う』 悲しいかな、僕は人の陰口や噂が更に嫌いだ。 ましてや、その陰口の対象が 自分が可愛くて仕方ないと思っている相手ならば尚更。 頭にきて、つい本音を言ってしまった。 その直後、彼女は激怒して帰ってしまったのだが 次の日にはお約束の様に 僕がホモで、後輩のモデルとデキているかもしれないという噂が学年中に広まっていた。 「よう、ホモ王子!凄い噂になってんなぁ、おい」 そんな中、呑気に話しかけて来たのは僕の親友、そしてクラスメイトでもある阿木。 「そうだな…。というか、その王子っていうのやめてくれないか。それに、こんな所で油売ってていいのか?今日はデートなんじゃなかったのか」 「いいのいいの。親友が困ってるんだから、俺のハニーも許してくれるさ。つか、ホモは否定しないんだ?」 「別に、否定なんてしないさ。僕はゲイなんだから。」 「うん、知ってる。…それにしても、やってくれるよな~あの2年女子」 阿木は面白そうにクツクツ笑っている。 「…しかし、これでお前の苦労も水の泡だ」 「………」 「せーっかく、噂が広がる前に泣く泣くモデルの後輩君と距離取ったり、女をモデルにしてカムフラージュまでしてたのにさぁ」 例の彼女が吹聴する以前から、僕のホモ疑惑はちらほらと噂になっていた。 それも、今回の件で完全に広まってしまった様だ。 「まあお前、ハナから隠す気なかったもんなぁ。コクられて馬鹿正直に自分はゲイだからって断るし」 でもそれは、ていのいい振り文句だと思われている様で、あまり効果は無かった。 「女子に次々モデル立候補されてもバシバシ断るのに、あの後輩君は自分から口説き落としてたし」 自分でも本当に迂濶だったと思う。 「どうしよう…。染谷までホモ呼ばわりされたら」 きっと傷付けてしまう。  
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