3/3

1756人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
  「んーでもさ、王子。このまま、あの子避け続けるつもりか?」 「…でも、それしか方法が…」 「でもあの子、お前に嫌われたと思って死にそうな顔してたぜ?ちゃんと言い訳するなりしないと、本当に取り返しつかなくなるぞ?」 「え…お前、染谷と喋ったの…?」 阿木は僕の質問には答えず 「傷付けないようにって距離取って、余計に傷付けてたら意味ないだろうよ」 「…でも染谷は、モデルを断ると清々したって顔してた」 これでやっと解放されるとも言っていた。 「だから…」 「ふーん?…で、お前はソレを馬鹿正直に受け止めたって訳ね」 「………」 「まあいいさ。俺の忠告無視して、卒業までこのままの状態でいたいならご自由に」 そんじゃ、俺はこれからデートに行って参りますよ。そう言って彼は、ひらひらと手を振りながら部室を出ていった。 …と、思ったらドアからひょこりと顔だけを覗かせて 「まあ、志野なら大丈夫さ。俺はお前を信じてるからな。成るように成るだろう。せいぜい頑張りたまえよ」 そう言い残して、今度は急いで部室を去っていった。 実に奴らしい。 何だかんだ言って、僕を心配してくれているのだ。 良い奴だ。 「そうだな…頑張らなきゃな」 このままの状態を続けていたって、何も意味がない。 染谷にちゃんと、本当の事を言うべきだ。 それから、きっちりフラれて、もうモデルは無理としても、また友達になって欲しいと言おう。 噂だって、その都度訂正して回れば良い。 そうした方が、きっと今の状態よりずっと良いに決まっている。 「そうとなったら『善は急げ』、だ。」 阿木に背中を押された僕は、前向きな気持ちと共に、座っていた椅子から腰を上げた。 .
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1756人が本棚に入れています
本棚に追加