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「お前って平凡だよな」
約16年間生きてきて、何度となく言われてきた言葉だ。
HRが終わり、美術室へ向かう為に仕度をしていると、隣の席のヤツが話しかけてきた。
「だから何?面白味の無い顔で悪かったな」
そんな事言われなくたって知ってるんだよ。
「お前の先輩も物好きだよなあ。こんな何処にでも居そうなの描いて何が楽しいんだか」
まったくだ。俺も先輩に問い質したいくらいだ。
俺は週に1、2度、絵のモデルをしている。
自分でも思うけど、俺は本当に平凡だ。
モデルなんて柄でもないんだ本当は。
「てか、お前に関係ないし、どうでも良いだろそんなの」
「まあ、そうだけどさ。でもさぁ、あの先輩と一緒に居るの嫌じゃね?」
「え、何で?先輩スゲー優しいし面白いよ?」
ちょっと変な人だけど。
俺の言葉に彼は「そうじゃなくてさ」と、少し言いにくそうに
「だってさ、あんなキラキラしい人と居たら比べられそうじゃんよ」
確かに先輩はキラキラしている。かなりの美形だと思う。
でもあの通り、天然で穏やかな雰囲気がその事を忘れさせるのだ。
先輩が美形なのはいいとして、俺は自分の平凡顔にこれといって特に不満も無い。確かに時々、先輩と比べてしまう事もあるけれど。
でも、それはあくまで先輩の顔が整ってるってのを確認する為の比較というか…。
兎に角、あの人は少々規格外だと思うし
比べられた所でどうという事はない。
大体、顔なんて自分が思うほど他人は気にしていない筈だ。
「ていうかさ、比べられるとかの前に女子は先輩しか見てないって」
「あ~、なるほどね。眼中に無いどころか、視界にすら入らないって事ね」
「何が視界に入らないんだ?」
突然、頭上から声が降ってきた。
「うわああ!」
「!」
今まさに、俺達の会話に割って入ってきたのは、紛れもなく話題の中心人物。
いつの間にか俺の背後からにょきりと顔を覗かせている。
180cmを軽く超える長身を折り曲げて、何だか間抜けだ。
正直俺もびっくりしたけど、悲鳴をあげたのは俺じゃない。
ヤツは先輩と俺に軽く挨拶をすると、そそくさと帰っていった。
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