第一章 狂い咲き

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―甲賀屋敷― 甲賀屋敷の裏庭で 薪を割る音が聞こえる。 午の刻。 着物の上を脱ぎ 薪を割っている鷹丸の側に 竹竿を肩に掛け 魚籠を片手に持った水湖が やって来た。 「鷹丸。」 水湖に声を掛けられ 鷹丸は 斧を木の切り株に突き立て 額の汗を手の甲で グイッと拭った。 「水湖。魚は釣れたか?」 「ああっ 大漁だ。」 ポンポンと魚籠を叩き 水湖は言った。 そして 表門の方を指差す。 「それより 客人だ。」 「客?」 眉を寄せ 一息つくと 鷹丸は 着物を整え 表門に向かった。
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