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「おはよう…」
「あら、おはよ、早いわね」
真夜は目覚ましが鳴る前に起きてしまった、それ以降は、未歩の事が気掛かりで仕方がなかった
「早いけど、もう学校行くよ」
玄関で靴を履こうとしていた真夜を母が止める
「ちょっと!朝ごはんは?おにぎり作ったから持って行きなさい」
母はおにぎりを三つ、真夜に手渡した
「わかったよ、じゃあ行ってきます!」
おにぎりを包んだハンカチを鞄に入れると、真夜は外へ飛び出した
「気をつけてね~」
母が手を振る、それに対して、真夜は振り向かずに右手だけ軽くあげて合図をした
早く未歩に会いたい!
真夜は徒歩から早歩き、早歩きから駆け足へと、屋敷が近付く毎に足が速くなっていた
「ハァ…ハァ…着いた!」
屋敷へ着く頃には、真夜の息は切れていた、
今日もいた…
しばらく深呼吸を繰り返し、呼吸を落ち着かせると、ポケットからミントのタブレットを二つ三つ取り出し、口の中で噛み潰した
「よし…」
昨日と同じように、入口の門を開ける
昨日とは一変して今日は曇一つ無い晴天、昨日の雨水の影響か、かなり蒸し暑い
真夜はゆっくりと未歩の元へと歩み寄った
「まや…?」
未歩は足音に反応したのか、急に声を出した
「は…はい?」
不意打ちを喰らった真夜は、声が少し裏返ってしまった
「………」
未歩は人形のように動かない
足音で気付かれたのかな…それにしては凄い聴力だ
「お…おはよう、未歩さん…」
「………」
真夜はとりあえず挨拶をしてみたが…やはり返事は返ってこない
挨拶を知らないのかな…
「鳥の鳴き声…」
未歩の視線は上に行っている
確かに朝だからか、雀がチュンチュンさえずっていた
「あぁ…あれは雀だね」
「すずめ…」
未歩はまた正面に向き直った
「うん、雀…日本全国、どこにでもいるよ」
「…すずめ…」
「うん………すずめ……」
二人の間にまたしても沈黙が流れる
「今度…図鑑か何か持ってきてあげるよ!きっと雀も見たこと無いと思うからさ!」
「………図鑑……」
「そう!他にも色んな生き物が載ってるよ!」
「………」
未歩の口元が一瞬だけ緩んだ
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