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未歩はハッとした、虚だった目に少し生気が宿る
「私……」
未歩は青ざめた標準で正面を見た
目線は庭に生えている木に向けられていたが、真夜の方を見ようとしているのは確かだ
「ど、どうしたの?」
真夜が緊張の面持ちで未歩に話し掛ける
「…………」
未歩は言い出せなかった、
私はどれだけの間、ここに封印されていたのだろう…
虚だった時の記憶がほとんどない…覚えているのは動物や虫達の鳴き声に、植物の匂い…
何年、何十年かぶりのたった一人の話せる人…
その人に離れられたら……私はまた一人ぼっち…
…人間の真夜は、私をなんて思うんだろう……
離れてほしくない……
「私…お母さん…知らないの」
真夜は焦りの表情を浮かべたが、未歩には見えない
未歩は「本当は死神なの」と、言う事ができなかった
「え?あ…あの…その…ごめん!母親の話なんかして…」
「ごめん!」
真夜は逃げるように走り去った
「あ…」
か
足音が段々遠くなる、行ってしまった、何なの?この気持ち…
未歩は足元を見た、いつの間にか落としてしまっていたのか、赤い絨毯の上に真夜からもらったおにぎりがポツンと落ちていた
未歩はそれを拾いあげると、少しかじった
…味がない…それになぜか変な感触がする…
それでも未歩はおにぎりを噛んだ
するとおにぎりは、パリっと言う音と共に、なにやら甘くてちょっぴりしょっぱい味がした
しばらく噛み続けていると、変な触感の物だけが残った
口から取り出すと、透明な物が口から出て来た
その透明な物は、おにぎりに巻いていたラップだった
未歩は解らずにラップごと口に入れていたのだ
これは食べ物?
未歩は試しにラップを剥がし、中身だけを口に入れた、するとすぐに先程の甘くてちょっぴりしょっぱい味が未歩の舌を刺激した
こうやって食べるのかな?
未歩はおにぎりを食べる度に段々と感情が戻って来た
「最後に食べ物を食べたのはいつだろう…」
未歩は色々考えてみたが、記憶にない
覚えているのはさっきの言葉だけ…
恐らくここにいる間は食べていないだろう
「私は死神、、人間を食べた、お母さんを殺した、そして封印された?」
記憶が少しだけ戻ったせいか、未歩の中でのボキャブラリーが少し増えている
考える事もできるようになった
そして今、未歩は考えている
「封印される前は…私は何をしてたの?」
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