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「藤好さん?」
真夜に挨拶してきたのは、幼なじみの藤好雛子(ふじよしひなこ)だった
雛子は明るく挨拶をしてきたが、彼女は何故か体育で使うジャージを着ていた
「どうしたの?藤好さん?」
真夜は驚いた表情で雛子に聞いた
「今日…傘忘れちゃって…制服がビショビショになっちゃったの…」
雛子は笑って答えるが…中学生の時からなじみのある真夜にはそれが苦笑いと言う事がハッキリと解った
なるほど…よく見ると髪の毛もずぶ濡れだ
いつもならフワリとした肩まで伸びた綺麗な茶色の髪が、今日は雨でペッタリとしている
髪の毛から雨の雫がポタポタと滴っている…
それを見つけた真夜は、見兼ねて鞄からタオルを取り出し、雛子に渡した
「髪の毛がまだズブ濡れじゃない、ほら…タオル貸してあげるから」
「え…でも…」
「タオルならまだあるから大丈夫だって、ほら…使いなよ」
「あ…ありがとう…」
本当はそれしか無いんだけどね、でもこう言わないと貰ってくれないからな
雛子は真夜のタオルを髪に当てて、水分を拭き取る
それにしても何で傘を忘れたんだろう…?昨日の夜から雨が降っていたのに…
真夜は少し気になったが、ホームルームのチャイムの音が教室中に鳴り響き、真夜の思考はチャイムに消し去られた
担任の先生が入って来た、真夜よりも将平よりも小柄で、髪の毛も表情も薄い、枯木のような担任は事務的に今日の予定を話す
そしてそのまま授業に入る、この教師はどうもいけ好かない、淡々とし過ぎている
授業を単なる作業としか思っていない
欠席する者を気にも留めず、ただ出席簿に記入するのみ
授業中に寝ている者が居てもお構いなし、ただ出席簿にチェックを入れるだけだ
コイツは何で教師になろうと思ったんだろう
そんな事を考えながら真夜はシャープペンをクルクルと指の上で遊ばせていた
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