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「失礼します…」
防音用の重たい扉を開け、初めて足を踏み入れるその部屋は、見慣れない機器や配線が所狭しと置かれている
役員会前に構想を練り上げるのに付き合って欲しいと、春樹副会長に呼ばれて入ったこの部屋は放送室、
週に3回、放送部の部長でもある春樹副会長が昼時に校内TVを流す場所でもある
『さぁて、本日も春ボーイの「鳥高の皆さんこんにちは!」のお時間がやって参りやした~』
僕は春樹副会長のこの番組が密かに好きだった
役員会では見せない満面の笑顔が、春樹副会長の違った一面を見るようで、
番組が始まると僕は弁当を食べる手を止めて、暫し画面に映る春樹副会長に見入っていた
…が、周りの皆には勿論、本人にだって絶対、そんな風に思ってる事など言えない
僕は辺りをキョロキョロと見回し、ここがあの番組のあの場所かぁ…と感慨に耽る
何だか制作現場の裏側を覗き見るような、そわそわした緊張感が走った
「まぁ座りたまえよメガネ君…」
春樹副会長は、そこが自分の部屋であるかの様に寛いだ姿勢でパイプ椅子に腰をかけ、僕にその隣りへ座る様促した
放送室という場所柄か、窓のないこの部屋には放課後のざわつきも一切聞こえず、
ジィーーという機械音だけが低く鳴り響く
「ここで…やるんですか?」
次の学園祭で催される生徒会レクリエーションの打ち合わせなら、論議されるべき場所がある筈なのに…
「生徒会室だと何かと都合が悪くてね」
春樹副会長は意味あり気に含み笑いを浮かべ、鞄からマイボトルと思われる水筒を取り出し、
中身を移し入れたコップを僕に差し出した
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