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さっきから心臓が耳の傍らにあるみたいに、ドクドクと鳴り響いている
荒くなる呼吸を必死に整えようとしても、どうしてもうまくいかない
熱く火照った顔はきっと、色白と言われる僕のこと、春樹副会長の眼には真っ赤に映っているに違いない
いや…いけない、余計な事を考えちゃうから赤くなっちゃうんだよ…
僕は春樹副会長に聞こえるほどの大きな深呼吸をして、書記長である自らの勤めを果たすべく、
なるべく春樹副会長と目を合わさずにいる為にも、B5のノートへありったけの神経を集中させた
『6月15日 放送室にて』
シャーペンでノートにそう記すと、本題であるレクリエーションの議題へと話を移す
「今年の…生徒会の催し物ですけども…」
「寸劇ねぇ、いつもの」
鳥ヶ丘高校では毎年学園祭で、生徒会が主体となって30分程の寸劇を行う事が定例行事となっている
寸劇と言っても大それた事はせず、大概はその年の旬である芸人ギャグを織り交ぜたパロディ芝居で、半分遊びのような企画でもある
尤も、その寸劇のアイディアが浮かびそうだから書き記してくれと言うので、僕ものこのこ放送室まで足を運んできた訳だけど、
「我々高校生としてはだな、大人の階段駆け登るこの過渡期という時期に、いつまでもチャラけた事やってんじゃあないよ!…とね、思う訳だよ私は」
「…成る程」
「テーマはズバリ、ババン!『大人』!これで行こうと思う!ココ大事だから蛍光でマーキングねー、テストに出るよぉー」
いつもの調子で語る春樹副会長の構想をノートに書き記していくうちに、
先程の妙な雰囲気から解放された気がして、僕は静かに胸を撫で下ろしていた
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