34人が本棚に入れています
本棚に追加
「大人、と言いますと…何かいいパロディとかあります…」
「赤ずきんちゃんなんかどうかなと思うんだよねー」
僕の投げ掛けた台詞に食い気味で入ってきた春樹副会長の提案に、思わず眼鏡が吹っ飛びそうになる
「あっ、赤ずきんちゃん!?」
「そうそう、赤ずきんちゃん」
これぞ、という慢心の笑みで春樹副会長はその素っ頓狂な提案を繰り返し口にする
「どこがテーマ『大人』なんですかぁっ!童話もいいとこじゃないですか!」
「甘い!甘いねー、浅はかだねーメガネ君は…」
そう言うと春樹副会長は自身の座るパイプ椅子を僕の方にズイと寄せ、低い口調で呟く様に語り出した
「いいか?狼はさっきまで婆さんの寝ていたベッドの中に潜り込み、赤ずきんの来るのをじっと待っているんだ…
若くて、白く透き通ったその柔らかい体に喰らいつく快感を頭に巡らせ、期待に胸踊り涎を垂らしながらな…」
「そのうち何も知らない赤ずきんは鼻歌でも歌いながら婆さんの家の扉を開ける…」
嫌な予感がした、
春樹副会長の息が掛かる程の至近距離に僕は位置する、
囁き掛ける様な語り調子が、直接僕の心臓に呼び声を掛け、鼓動は再び早くなる
春樹副会長はそんな僕の焦燥を知ってか知らずか、構いもなしに妖しげな童話を続ける
最初のコメントを投稿しよう!