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「見せたいものもあるの。」
お迎えを承諾した後、そう付け加えたユウの声は、弾んでいた。
でもきっと、それが分かるのは俺だけ。
ユウは、あんまり感情を表に出さない、らしい。
それでよく、怒っていると誤解されたものだと、前に零していた。
俺から見ると、ユウ程分かりやすい奴、珍しいぐらいなんだけど。
ユウが見せたいと言った物、それは新しい洋服だろうと推測する。
この間の買い付けから帰ってきた日、ユウは見るからに浮かれていた。
洋服、と言っても、自分のものではない。
俺の服。
ユウは俺に似合う服を見つけてきては、着てくれとせがむ。
買い付けまでも任されているユウの目に狂いは無くて、ここ2年で服を褒められる事が増えた。
だから、俺はユウの店でしか服を買わなくなった。
毎日俺の服を選びながら、ユウはどこか誇らしげだ。
だから俺は、そんなユウの頭をくしゃくしゃに撫でてやる。
全体にウェーブがかかったユウの髪は、ふわふわと揺れる。
そしてユウも、ふわふわと笑う。
朝の至福の時間。
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