すみれの砂糖漬け

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屋敷の玄関には ノークラント家の娘 アデライドが私を待っていた。 「ご機嫌ようアデライド」 「ご機嫌ようヴィヴィアン!!」 アデライドは 興奮した様子で手をとり招きいれた。 「あなたお聞きになった?」 カスタードのように柔らかい頬を 少し赤くし興奮した様子で アデライドは私にそう囁いた。 「あら、なんのお話?」 「まぁミリセントの話よ 彼女が!!あぁ彼女が!!」 「どうしたっていうのよ?」 「リチャードと秘密婚約しのよ!!」 「どのリチャード?」 「エルンフォード子爵家の長男よ!!」 アデライドは まるで神様が 目の前に現れたかのように喜び 平常心を忘れている。 でもエルンフォード子爵家は アデライドが騒いでもおかしくないほど 名門だし裕福な家系だ。 「でもなぜミリセントが?」 「なんでも音楽の趣味が合ったそうよ 二人ともワーグナーが好きなのよ」 「まぁお似合いね」 私達は話しながら客間に着き 進められて深紅のビロードが張られた 贅沢な席に座った。 「ミリセントは今日来るの?」 「ええ!!来るわよ!!」 「あまり根掘り葉掘り聞いてはダメよ」 「あらどうして?」 アデライドは不服そうに私を見つめる。 「はしたないわよ、それに……」 私が言いかけると 「あらご機嫌よう」 マリアナとミランダが 仲良く二人で現れた。 「まぁアデライド!!その絹のドレス 深緑が素敵だわ!!妖精のようね」 「マリアナも5月の薔薇のような 薄紅色がとても似合っていてよ」 「ヴィヴィアン、その生地何処のなの? みてよマリアナ!!この繊細な刺繍を」 「まぁなんて素敵なのかしら!! 美しい花々が絹刺繍されていて あなたの美しさと合うと まるで神話の花の女神のようだわ」 「あらそういうミランダの服も凄いわよ ほらみて!!クリーム色の生地に 豪華な金で刺繍されているのよ」 皆で皆のドレスを いつものように褒め合う。 「ミリセントの話お聞きになった?」 マリアナがそう切り出すと 「皆噂しているわ 知らない人なんていないわよ」 アデライドは そういいながら笑った。
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