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口の中にスミレの薫りが広がる
小さな春のような
暖かい薫りが
私は好きだった。
とても美しいけれど実用的とは言い難い
装飾過多なテーブルに
お茶の用意がやっとされていく。
また、リネンのテーブルクロスに
さらに古めかしいレースを重ねた
テーブルにはポンチ皿が並べられ
また、いくつかのテーブルには
その他の軽食が
(とはいっても大体47種類のお菓子達)
所狭しと並んでいる。
お菓子が運ばれている間
皆、メデューサに石に変えられたように
押し黙り、それぞれ考え事をしていた。
でも結果として皆同じこと
子爵がミリセントと来る
その事が気にかかったのだ。
しかし私はそんなことよりも
空腹に耐えかねて
私はアデライドにお茶の催促をした。
なにしろお茶会の
予定時間は大幅に過ぎているのだもの
皆もそれに賛成し
私達はようやくお茶にありつけるように
なったのだった。
「ヴィヴィアン、インドと中国は?」
「インドにしてちょうだい」
「お砂糖はたっぷりね?」
「ええ、ミルクを多め……」
私は目の前に今、話題の人物
ミリセントと子爵が現れたので
言葉を止めて皆に見るよう促した。
「まぁ!嬉しい驚きですわ
ミリセントご機嫌よう
今日も素敵なドレスね
象牙色が良く似合うこと……」
私はいいながら
横の男性に目を向けた。
栗のような髪に
少し冴えない青い瞳
背丈は普通、顔立ちも
肖像画で修正する必要はない程度
服装もシックだか
流行を追いすぎていて
真面目な人物とは思えなかった。
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