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若葉高校。地元ではそこそこ頭の良い学校として知られているこの学校に、二人目の名物が、否、「一人目」の名物が帰ってきた。
その人の名前は間宮理彩。
肩に掛かる程度の髪は色素が薄く、生まれつきの茶髪らしい。
パッチリした目に長い睫毛、明るい雰囲気を笑顔で振りまく美少女だ。
こうして特徴を並べると俺の幼なじみの撫子とは正反対の人間に聞こえるのに、その雰囲気はどこか撫子と似ていた。
彼女は事故によって入院していたのだが、このたびめでたく退院したらしい。
学校のアイドルだったらしい彼女の復帰に、校内の雰囲気は浮き足立っていた。
だが、生徒会副会長のある言葉により、俺の心は地に叩きつけられたような錯覚に陥ったのである。
――それは、戦いの始まりを告げる雷だった。
相手を退ける為じゃなく、自らの道を譲らないための戦い。
彼女の居場所を作るため、俺の居場所を守るため。
俺は、落ちた雷に怯える少女の手を引く。
お前はそのままで良いのだと、太陽の下で言ってやるために。
天候は雷雨。視界は最悪。
俺は、走り出す。
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