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「まさか、こんな事になるなんてね」
俺の親友、籔内一弥は、自分の予想を大きく外れる事態になったことに驚いていた。
「つまり、今生徒会は間宮理彩派と美作さん派に分かれてるってわけだね?」
「まあ、そうなるな」
結局、事態は俺の予想を完全に飛び越え、撫子と間宮理彩の真っ向勝負になってしまった。
昨日のことが思い出される。
「いや、選挙って、間宮理彩……さんは三年生でしょう!? 何で選挙に出られるんですか!?」
「特例ってやつだ。理彩のこの学校に残した功績は数知れない。その理彩のたっての願いで、今年度限りの生徒会長選挙を開くことになったのさ。『一応』、選挙という形を取らなければ、君たちの立場がないだろうからな」
それは、明らかに俺たちを見下した台詞だった。
間宮理彩が勝つと信じて疑っていない。
間宮理彩が生徒会長になって当然だと言ってはばからない。
これが、仙崎さんの本性なのか?
「詳しい説明は後で受けるだろうが、これから一ヶ月、僕たちは君たちと『協力』して文化祭の準備をする。その傍ら文化祭のあとに来たる選挙のために選挙活動をするというわけだ。もちろん、現生徒会長の美作が有利なのは変わらないが、理彩の人徳ならそんな条件をはねのけられると信じている」
「でも、先輩たちは受験生でしょう? 生徒会長なんてやれるんですか?」
俺より幾分冷静な葛城が俺の聞きたかったことを代わりに聞いてくれた。
「理彩は優秀だから、推薦で行くのがもう決まっている。彼女の進路はほぼ約束されているんだ。僕もまあ似たようなものだから心配は要らない」
楽観的すぎた。間宮理彩の生徒会長への執着を甘く見過ぎていた。
……いや、むしろ執着しているのは仙崎さんの方か?
「おいおい、何を躊躇っているんだ? 何も問答無用で君たちを追い出そうとしている訳じゃないんだ。正々堂々、真っ向勝負といこうじゃないか」
その顔に余裕を張り付けて、仙崎達彦は白々しく笑った。
「それで、美作さんはどうなったの?」
「撫子か……あいつはやっぱりショックを受けてたよ。選挙云々より、仙崎さんが間宮理彩を生徒会長にしたがってることが堪えたらしい」
人に嫌われることを何より恐れる繊細な彼女だから、必要とされていないという事実はそれだけで心を苛むのだ。
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