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木の生えていない空間に焚き火を起こし、十数人の男たちがそれを囲う様に座る。その格好はお世辞にも品がある物ではなく、その見た目は一目で賊であることを示す。
「いやぁしかし、今日の獲物は上々でしたねぇ」
「前もって情報を得ておいて正解でしたね。アルラインの警備兵が居ないだけで
あんなに楽にいくなんて」
どうやら事前に下調べをして犯行に及んだらしい。しかし珍しくはない。粗暴な彼等も返り討ちは避けたいのであらかたの情報は知っておきたい。金さえ払えば賊であろうと貴族であろうと助力する物は少なくない。
「しかし…見れば見るほどいい女じゃねぇか、娘さんよぉ」
頭と思われる男が少し離れて縛りおかれている少女を見る。
「っ!必ずお父様が助けに来て下さるわ」
自分の状況を理解した上で彼女は尚も強気な発言をする。しかし酒でホロ酔い状態の彼等にとってそれは可笑しな話でしかなくドッと笑いが起きる。
「来るわけねぇだろうが。あんだけ家や村をぶっ壊されたんだぜ?お前の事なんか気にしてられねぇっての!」
そう笑い飛ばされ、少女は歯を食い縛り悔やむ顔をする。
「…………もう限界だ」
焚き火の灯りが届き辛い藪の中。身を潜め、先程の一部始終のを見ていた男の空腹の限界を突破し判断力を大幅に鈍らせられた頭ば特攻゙の指令を体に下し、ゆっくりと男は茂みから抜け出る。
「っ!誰だテメェ!」
こちらに気付いた一人が警戒の声を上げ、全員の視線がこちらに集まる。
「やぁやぁ皆さん今晩は。俺は怪しくないですよ?見てくれどぉりの旅人ですよ?」
灯りに照らされ、先程まで確認できなかった男の姿がハッキリと確認できるようになる。
特に手入れのされていない無造作な白髪。その髪の色で目立つ碧眼で目付きは悪い。そして脹ら脛まで丈のある白のコートのような上着を胸からから腰辺りまでファスナーで締めて着ており、その下から黒の中着や黒くゆとりのあるズボンとブーツが見える。
そして、何よりも目立つのがその両手首に付いている黒色の手枷のような腕輪である。
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