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大男から振られた斧を避けようともしない白い男に、人質の少女はその先の絶望的な光景を易々と予測できたしまい、地面に伏せるように頭をさげ目をきつく閉じる。
静寂。斧のスイング音から先の音が一切無く、少女は怪訝におもいながらもゆっくりと上目遣いに前を見る。
しかし、すぐには現状を飲み込めなかった。わかるのは首を飛ばされてると思った首が未だに健在する白い男と、その首を狙ったハズの夜族が木の棒を振り切っていたと言う事である。
「………テメェ何しやがった?」
一時の静寂の間。ただ唖然とほうけていた大男は振り切った木の棒を地面に捨て、まるで得体の知れない物を避けるようにその場から後退り、白い男から距離を取る。
「あぁん?見てなかったのか?貴様は頭も悪けりゃ目も腐ってんのかぁ?生きてる価値零だなオイ」
変らない挑発するような台詞を言っては呆れるように溜め息を吐き、指の骨を鳴らしながら不敵に笑う。
「そんなこたぁ聞いてねぇよ!俺は何をしたら斧が砕け散るんだって聞いてんだ!」
夜族は叫んだ。怖れと恐怖を持ち合わせながら。目の前で起きた事に戸惑う。
「教えっかよ。知りたきゃまず身の程から知りやがれやカスが」
そう言って鼻で笑う。
それが随分と頭に来たらしく、先程のビビりようが嘘のように反転し鬼の形相になる夜族の頭……面倒なので夜族頭と省略することにする。
「テメェら構うことはねぇ!コイツの手足ひんむいてやれ!」
その言葉を聞いた部下が、僅かに生まれた恐怖を払拭するように勢いよく咆哮し武器を構え始める。
「あぁ面倒臭…だから馬鹿は嫌いなんだよ。話通じやがらねぇかんよ…こりゃトンズラするしかねぇ…な?」
面倒な事を嫌う癖に面倒事を引き起こす性格をしている自分に何度目かわからない呆れを感じ、目の前の事態から撤退すべく後退りをしたが足が何かに当たり遮られる。
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