283人が本棚に入れています
本棚に追加
「悪かったな」
「いーえ、どうせついでだしね」
脚を組んで、腕組みして。
細っこい身体がさらに小さく纏まっている姿に眼をやった。
ソッポを向いてはいるが、別に機嫌が悪いわけじゃないのは分かっている。
伊達に長い事一緒にいるわけじゃない。
「…ねえ」
「ん?」
「今日はあのひと来るんだ?」
唐突に尋ねられ、答えに窮していると、これまた唐突に笑い始めやがった。
「……あは、ごめん、分かってて言ってみた」
「お前ね…、…知らねえよ」
ボソッと呟いたのは恥ずかしさと、バツの悪さからだ。
『ぜってー来んなよっ』
五日前、俺があのひとに投げつけた言葉。
「連絡は?」
「ねえよ」
あらら、と呆れた口調で言うこいつに、何も言い返せない自分が腹立たしくて。
「別にいつもの事だから、気にしてねえし。……またすぐ収録だろ?」
「まあね。 いつもの事っていえばそうだけどさ」
苦笑する顔に、イラついたのを隠すように反対の窓に額を押し付けた。
.
最初のコメントを投稿しよう!