カム ホーム

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「じゃね」 タクシーを降りた俺に、少しだけ先に一つ年をとった男が窓から手を振る。 「あのひとによろしく」 ニヤニヤと笑うこいつに、思い切り嫌な顔をしてやった。 走り去るタクシーを見送って、トボトボとマンションのエントランスへ向かう。 見上げてもここからじゃ俺の部屋は見えない。 「来てるわけない…か」 オートロックの鍵を開け、中に入り、エレベーターへ向かった。 『誕生日はドラマの連中と飯食いに行くからな!』 『まあまあ、その日に帰るって言ってんだから許してあげなよ』 ハイテンション男がとりなすのも気にくわなくて。 『ぜってー来んなよ!』 吐き捨てるように言って楽屋を逃げ出した。 あれから一度、メールが来たが見てもいない。 多分、これから出かけるとか、いつ帰るとか。 いつも通りのメールだって分かってるから。 だから余計に腹がたって。 「いい年をして、何やってんだか」 ため息はエレベーターの扉が開くまで止まる気配を見せなかった。 .
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