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「これじゃぁまるで……」
鏡に映った自分のなれの果ての姿は、生気の欠片もなくただただ表情の感じられない笑みを浮かべていた
それは恐らく、そこに映る自分の姿を見て……オレは死神を連想したからだろう
自分でも気付かない内に口元だけ違う生き物のように笑っていた
「もう、人間じゃない……か、確かにな」
そう見えても仕方がない
そう思えるほどオレはやつれていたのだった
だが、オレは何故か目を背けたくなるほどのその姿から目が離せなかった――
『自分ではない何か』
それを感じたからだ――
だけど、自分の顔を見つめていても気配を感じるわけでもなく、オレは1度大きなため息を吐いて鏡から逸らした
自分のいるベッドの上から上半身だけ動かして周りを見渡した……
右手に簡易な椅子が2脚とパイプ椅子が1脚……それに白い机と、机の上に銀のトレーがある
トレーの中には、何かの薬品が詰まった小指ほどのビーカーと分解されている注射器、それに小さなビン――これにも固体状の薬品が詰め込まれている
そのトレーの横にはクリップで止められた紙の束、一番上の紙には何かの写真も添付されている
そして右側の壁には白い壁と同じ色のドアがある
さっきの女性が出て行ったドアだ
オレの真正面に目を向ければ1枚の鏡
左に目を映せば、手の届く距離に窓が有る――
四角く閉ざされた質素な空間
それが今オレが居る場所だ
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