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「あの女ぁっ!ふざけんなぁぁぁぁ!」
俺の魂の慟哭が、爽やかな朝の始まりを告げる。
「どうしたんだよ誠、朝っぱらから!」
姉貴が俺をしかりつける。寝起きらしく、機嫌は悪そうだ。
「姉貴!聞いてくれよ。光のやつがさ!」
「光ちゃんがどうかしたの?」
俺は携帯の画面を姉貴に見せる。
『貴方とはもう付き合えません。ごめんなさい』
「ああ、こりゃ……」
「朝起きたらこんなメール届いてたんだぜ?ふざけんな!」
俺は雄叫びをあげる。
「誠……女の子には、その、そういう時もあるんだよ。野良犬に噛まれたと思ってさ……」
「狼に腕を食いちぎられたんたぜ?黙ってられるか!」
諦めろという姉貴の提案を俺は蹴る。
このままじゃ、納得できない。
「どうするんだ?」
「実際会って確かめる。今日は光は確か新聞部の取材で鏡ヶ岳に行ったはずだから」
「……わかった」
俺は朝食を取ると、自転車に乗り、光に聞いた鏡ヶ岳に向けて疾走した。
〇
自転車を疾走させる俺――――鳴海誠――――が考える事は、ついさっきまで彼女だった、相川光のことである。親を無くし、姉と二人暮らしの俺とあいつは中学からの縁でなにかと気があった。高1の時俺が告白し、OKをもらい以後楽しくやって来たはずなのに、いきなりなぜ?
俺はそんなことを考えながら自転車を走らせた。
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